個人心理学(アドラー心理学)の提唱者、アルフレッド・アドラーの思想を1冊に凝縮した、「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)。
発行部数世界累計960万部(2022年12月現在)のベストセラーです。
私は、以前一度読んだ後、本棚にしまっていたのですが、今回あらためて読み返したところ、就職活動でも活かせる本だと思いました。
特に、面接で緊張してしまって本来の力が出せなかったり、面接官の反応が必要以上に気になってしまったりする方に読んでいただきたい本です。
なお、本書はAmazon Audible(オーディブル)でも聴けます。
「嫌われる勇気」について
「嫌われる勇気」は、アルフレッドアドラーの思想(アドラー心理学)を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめられた1冊です。
心理学に関しては、日本ではフロイトやユングが有名ですが、アドラーは世界的には先の両名と並ぶ3大巨頭として並び称される存在です。
本書の概要
以下、本書のポイントと、それに関して私が感じたことをお話ししたいと思います。
なお、本書の内容は多岐に渡りますが、今回の記事では、「目的論」と「課題の分離」に絞ってお話しします。
目的論
あるとき、哲人のもとに1人の女学生がやってきます。彼女の悩みは「赤面症」についてです。密かに思いを寄せつつもまだ気持ちを打ち明けられない男性がいて、赤面症が治った暁には、その彼に告白してお付き合いしたいのだと。そのような相談でした。
しかし、哲人の見立ては違います。どうして彼女は赤面症になり、また、どうして治らないのか。それは、彼女自身が「赤面という症状を必要としているから」だと。
つまり、赤面症がある限り、告白の勇気を振り絞らずに済むし、たとえ振られても自分を納得させられる。最終的には「もしも赤面症が治ったらわたしだって・・・」と、可能性の中に生きることができる。
告白できずにいる自分への言い訳として、あるいは彼から振られたときの保険として、赤面症をこしらえている。これが「目的論」です。
赤面症があるから告白できないのではなくて、その逆?
この目的論によって、全て👇のように考えられます。
- 怒りに駆られて大声を出した(原因論)
- 大声を出すために怒った(目的論)
- 時間がなくて小説の賞に応募できない(原因論)
- 応募しないことで可能性を残しておきたい(目的論)
ここから、就職活動の面接で、いつも緊張してしまって結果が出せないという場合について考えてみたいと思います。
これを目的論に当てはめると、👇のようになります。
- 原因論
- 面接で緊張して本来の力が出せないから、内定がもらえない
- 目的論
- 内定がもらえなかったときの保険として「緊張」をこしらえている
とても厳しい、また、簡単には受け入れがたい話ですよね。
ただ、これを読んだとき、私には思い当たるところがありました。
私は、就職活動のとき、面接が上手くいかず、なかなか内定がもらえませんでした。
何社受けても内定がもらえないと、だんだん自信がなくなってきて、最終的には自分を否定されているような、自分は価値がない人間だと言われているような、そんな感覚になってきます。
不思議ですよね。たとえば受験のとき、希望していた学校に落ちたことは何度もありましたが、それでも自分に自信をなくすようなことはありませんでした。
もちろん、落ちた数が違うと言えばそれまでなのですが。でもなんでしょう、勉強の場合は、もちろんできたほうがいいのですが、(話の内容が的確かどうかは別にして)「勉強だけできてもだめだ」みたいなことを言われるときもあるので、受験で落ちても、恥ずかしくてそれを人に言えない、みたいなことにはあまりならなかったんですよね。
でも、面接に落ち続ける自分は本当に恥ずかしかったし、情けなかった。そして、そんな自分を認めたくなかった。
そんな中で、仮に誰かから、なぜ落ちたのか思い当たる理由を聞かれたとしても、「面接ではちゃんと話せたはずなのに、なぜか落とされた。」と言う勇気は当時の私にはありませんでした。そんなことを言えば、「採用する価値のない自分」を認めてしまうことになりますから。
ですので、「あの会社は学歴重視だから」とか、「面接官との相性が悪かったから」とか、自分にとって都合のいい理由を挙げる、つまり言い訳をすることになります。
でも、これって誰のためなんでしょうか。自分のプライドのため?
それもあったかもしれませんが、私が恐かったのは人から否定されることでした。つまり、面接官や周りの人から価値のない人間だと思われることが本当に恐かった。
アドラーは言います。「全ての悩みは『対人関係の悩み』である」と。
そして、その対人関係の悩みを一気に解消する方法が、次にお話しする「課題の分離」です。
課題の分離
「課題の分離」って何?
「課題の分離」とは、「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離することです。
そして、その上で大切なのは、「ここから先は自分の課題ではない」という境界線を知った上で、他者の課題は切り捨てることです。
たとえば、直属の上司が全く話が通じなくて、ことあるごとに怒鳴りつけてくる。どんなにがんばっても認めてくれず、話さえまともに聞いてくれない。
そんな上司に何とか認めてもらおうと、日々がんばっているとします。
しかし、本来最優先で考えるべき「仕事」の目的は、言うまでもなく、その上司に認めてもらうことではありません。
ここで、課題の分離ができていれば👇のようになります。
- 上司が怒りをぶつけてくることは、わたしの課題ではない
- 理不尽な感情は、上司自身が始末するべき課題だ
- すりよる必要も、自分を曲げて頭を下げる必要もない
- わたしのなすべきことは、自分の課題に立ち向かうことだ
これは、就職活動の面接についても言えますよね。
自己紹介や志望動機などの回答内容を作り上げたり、事前に面接の練習を繰り返したりすることで、内定を得られる確率は上がる。
しかし、面接は面接官とのコミュニケーションのため、最終的に判断するのは面接官である。
これを整理すると、👇のようになります。
- 自分の課題
- 面接で何を言うか、どのように話すか
- 他者の課題
- 「わたし」をどのように評価するか
難しいですよね。面接の目的は内定をもらうことで、そのためには面接官に高く評価されなければいけませんから。
しかし、一方で、自分にできることは限られていて、たとえ最善を尽くしたとしても、最終的に面接官からどのように評価されるかは分かりません。
そのように考えると、面接で必要以上に面接官の反応を気にする必要がなくなり、自分の課題に集中することで、多少なりとも緊張感が薄れるような気がします。
自らの生について、あなたにできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」、それだけです。
一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。
「嫌われる勇気」ダイヤモンド社
まとめ
以上、「嫌われる勇気」のポイントと、それに関して私が感じたことをお話ししました。
冒頭お話ししたとおり、特に、面接で緊張してしまって本来の力が出せなかったり、面接官の反応が必要以上に気になってしまったりする方には、ぜひ一度読んでいただきたい本です。
心理学という、一見難しいテーマを扱っている本書ですが、終始、「哲人」と「青年」の会話形式で話が進んでいくため、非常に読みやすい内容になっています。
特に「目的論」の考え方などについては、「劇薬」とも言えるような厳しい内容も含まれていますが、きっとそこから何か得られるものがあると思います。
なお、本書はAudible(オーディブル)でも聴けます。聴き放題対象外の作品ですので購入する必要がありますが、本を読む時間のない方や、読むよりも聴く方が理解しやすい方にはおすすめです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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